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マーケティングコラム1 :結局「売れている仕組み」を知っている人が勝っている

マーケティングの勉強にまずは本でも…と思っても、関連書籍はあまりに多く、一体どれを選べばいいか迷ってしまいます。そんなとき、“はじめの一冊”に最適なのがこの本、『世界のエリートが読んでいる MBA マーケティング必読書 50 冊を1冊にまとめてみた』 (KADOKAWA)です。著者は日本 IBM でマーケティングマネージャーを務め、現在は戦略コンサルタントとして活躍する永井孝尚氏。MBA マーケティングの知見豊かで現場をよく知る永井氏が、数あるマーケティング本から 50 冊を厳選。「定番から最新まで MBA マーケティング指南書のエッセンスをまとめた一冊」です。

ブランディングの科学 新市場開拓篇

名著が指摘する内容を端的にまとめるだけでなく、星野リゾートやニトリなど国内企業の事例も盛りたくさん。身近な話題に引き寄せて解説されているので、ビジネスエッセイとして面白く読み進めることができるのも本書の特徴です。
たとえば……『ブランディングの科学 新市場開拓篇』(朝日新聞出版)から、「『強いブランドポジショニング』は不要である」ことを説明する事例として取り上げているのが、なんと俳優の堺雅人!
堺雅人が 2013 年に主演した『半沢直樹』は社会現象とも呼ばれるヒットとなりました。
彼はその後、大河ドラマ『真田丸』などさまざまな作品に出演。7年後に制作された続編も大きな話題となったわけですが…もし、続編がすぐに作られていたら、「堺雅人=半沢直樹」のブランド連想があまりに強く、演じる役柄が狭まっていただろうというのです。
十分な時間をおいての続編制作とその間の活躍もあって、堺雅人は「個性的なさまざまな役を演じ分ける役者」として、さまざまな CEP(カテゴリー・エントリー・ポイント)で選ばれる役者になった、と。
強力なブランドイメージをもつよりも、むしろ、なるべくたくさんのジャンルで思い起こされるブランドを目指すべき--。CEP の重要性がまさか、半沢直樹で語られるとは!
マーケティングの考え方は身近な事象にも現れていることがわかります。

当たり前をアップデート
本書は「戦略」「『ブランド』と『価値』」「サービス・マーケティング」「マーケティング・コミュニケーション」「『チャンネル』と『販売』」「『市場』と『顧客』」の全6章からなり、知りたいことや興味があるジャンルから読み進めていくことができます。
「この 50 冊がわかれば、現代のマーケティングにはひと通り対応可能」という便利な本なのですが、本書を読んでつくづく思うのは、自分の中の「常識」や「当たり前」は常にアップデートする必要がある、ということ。印象に残ったフレーズをいくつか取り上げていきましょう。


■「すべてのビジネスはサービスの交換だ。
  モノ自体には価値はない」(p183)

サービス・ドミナント・ロジックの発想と応用』(同文舘出版)を紹介するパートで登場する一文です。ものづくりの匠が聞いたら卒倒しそうな一言ですが、その意図は、「モノに価値があるかどうかは、顧客の状況次第」ということです。
それを理論化したのが、「サービス・ドミナント・ロジック(SD ロジック)」という考え方で、本書では、端的にこう説明しています。

「価値は企業が顧客にサービスを提供する瞬間に生み出される。大行列のラーメン店の店主が『ウチのラーメンは絶品』と思っても、本当に絶品か否かを決めるのは顧客だし、そのラーメンの価値は、サービス交換時に食べた顧客により生み出されている。
常に顧客が主体となって、企業と価値を共創しているのだ。
企業は『ウチのラーメンは絶品です』と顧客に伝えて、来店した顧客に約束した価値を体験できるように必死に努力するくらいしかできない」「価値あるモノを作っている」という自負が大切であることは揺らぎません。

しかし、「モノにこそ価値がある」という考え方にしばられていると独善的になり、ともすると顧客志向と逆行してしまいます。これからのものづくりには自信だけでなく、謙虚さと広い視野、顧客を正しく捉えることが必要なのでしょう。


■「圧倒的に強いブランドをつくることが重要だ」

「既存のお客様との絆を強くすることが、最優先だ」
私たちはこう考えがちだが、本書は「ソーシャルメディアが主流の透明な時代では、これらの考え方は時代遅れ」と一刀両断。 (p236)
これは、アメリカの著名人やフォーブス誌も絶賛したという『ウソはバレる』(ダイヤモンド社)を紹介するパートの冒頭文です。
ブランド力や顧客ロイヤリティは大事じゃないの!? という戶惑いもあるでしょうが、本書が伝えているのは、「スマホを駆使する現代の消費者は、マーケターが思うようには簡単に操られない」ということ。

「新しい顧客コミュニケーション方法を提唱」するこの本は、SNS 時代のマーケターのあり方を解説しています。
興味深いのが、人の購入判断は、「POM」という3つの情報源の組み合わせによって決まるというお話です。
P(Prior)……その人が前からもつ好み・信念・経験
O(Other)……他の人々や情報サービス
M(Marketer) ……マーケッター


「『POM』の比率は状況により変わる。O が増えれば、P と M が減る。そして消費者は、POM のバランスを考えつつ意思決定する」そうで、O への依存度が上がるのは次のような場合だといいます。
・慎重な意思決定が必要な高額商品
・製品の機能や品質に大きな違いがでる商品
・リスクや不確実な要素があるとき
・常に最新型が出るもの
・車やスマホなど皆の前で使うもの

逆に、「P も O も重要でない場合に、はじめてマーケター(M)が影響力をもつ」そう。マ ーケティング戦略を考えるとき、まずは自社製品が「PMO」のうち、どの影響を強く受けるものなのかは確認しておくといいかもしれません。
その他、「O に依存する世界では広告も変わる。広告では認知獲得も説得もできないので、顧客の関心を生むことに専念すべき」「O に依存する新しい世界では、ユーザーや専門家の率直な意見も見える化すべき」「大量の商品情報を流したり、『ソーシャルメディアを使えば、消費者はブランドのファンになり応援してくれる』と考える人もいる。これらは本来 O として活用すべきソーシャルメディアを M として使っている時代遅れの考え方」といった指摘も。
いまや、マーケティングに不可欠となった SNS の活用。戦略をもって行わなければ逆効果になる可能性もあり…気になる人は本書はもちろん、『ウソはバレる』をチェックすることをおすすめします。


■顧客は「ソリューション疲れ」を感じており、
 手間がかかる割には売れない。(p289)


B2B の営業では、お客様の課題を細やかに聞き取り、その解決法を提案するソリューション営業が推奨されてきました。しかし、どうやらそれも前時代のセオリーのようです。
新しいセールスのあり方を指南するのが、『チャレンジャー・セールス・モデル』(海と月社)。著者は世界有数のアドバイザリー会社 CEB のエグゼクティブ・ディレクターとマネージング・ディレクター。同社が数多くの企業に提言してきた B2B 営業のあり方についての知見がまとめられた一冊で、これからの B2B 営業は「論客型」を目指すべきだというのです。

論客型とは「論議を恐れず顧客に自己主張する」タイプ。「論客型はある意味『上から目線』だ。顧客に独自の知見を提供し、顧客に『こうすべき』といういい意味のプレッシャーをかけ、建設的な緊張をつくり、顧客を指導する」営業スタイルのこと。
いやいや、お客さんに対して上から目線とか無理!と思う人もいるでしょう。しかし、CEB社が全世界 6000 人のセールスを調査したところ、もっともいい成績だったのが論客型。誰よりも多く電話をして顧客を訪問する「勤勉型」や一生懸命顧客のために働く「関係構築型」などを抑え、ダントツに好業績を上げたそうです。

「『プレゼントするから欲しいモノ教えて』と寄ってきて、イチイチ教えなければならない人と、『欲しいモノ、これですよね』とその場で期待を超える素敵なプレゼントをする人。相手をワクワクさせるのは後者の人だろう。現代の B2B 営業も同じである。多くの顧客は自分の課題がわからず困っている。課題を教えるほうが有効なのだ」
確かに、自分が顧客の立場だったとして、忙しい中、営業担当者に「課題はなんですか?」
とあれやこれやインタビューされること自体、疎ましい。それよりも、ちょっとした会話から気づかなかった問題を見出してくれ、新しい知見を与えてくれるほうが断然ありがたい…。
他にも本書では、商談のステップや営業プロセスの変化にも言及。⻑年の営業スタイルがなんとなく時代に合わなくなっている感覚がある人は一読すべきかもしれません。

          ◇      ◇      ◇

いかがだったでしょうか?本書にはまだまだたくさんのマーケティングの最新知見が紹介されています。
著者の永井孝尚氏は本書の冒頭で、こう指摘しています。
「日本のビジネスパーソンは素手と竹槍で、モビルスーツに乗る相手と戦っている」そして、本文の最後はこの言葉で結んでいます。「自ら変化する者になろう」――。

感覚と経験だけでなく、理論立てたマーケティングなしに戦える時代ではなくなりました。
時代とともに変わるマーケティングを学び、実践していくことは変化を受け入れていくこと。サバイブしていくための必要条件になっています。変わらなくては、残っていけない--『世界のエリートが読んでいる MBA マーケティング必読書 50 冊を1冊にまとめてみた』は、そんな覚悟を与えてくれる一冊でもあります。

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